皆さん、こんにちは。
今回はビッグファイブ(Big Five)という性格の分類テストについて解説します。
ビッグファイブとは、人間の性格を5つの特性で説明する理論です。
- 開放性(Openness)
- 協調性(Agreeableness)
- 誠実性(Conscientiousness)
- 外向性(Extraversion)
- 神経症傾向(Neuroticism)
これらの特性の大小によって、個人の性格がわかるというわけです。
ビッグファイブは長年に渡る多くの研究から、現在最も精度の高い性格テストだと言われています。
そのため、皆さんが普段何気なく利用しているサービスやテストにおいても、分析のベース理論として採用されていることも少なくありません。
もちろん、就活や転職の性格テストにおいても多く採用されています。
自己分析で何から始めたらいいかわからない人は、とりあえず自分の性格をビッグファイブで知ってみることをおススメします。
こちらから簡易版ビッグファイブで結果を知ることができます。
この記事では、ビッグファイブについて詳細に説明するだけでなく、
- ビッグファイブ×職業の研究事例
- ビッグファイブ簡易診断テストの紹介
- 結果タイプ別の向いている職業解説
といった、「ビッグファイブをどのように就活や転職の自己分析に利用すべきか」という観点で解説していきます。
- 性格を自分で把握することって難しい
- 知り合いに聞いても、本当の自分を知ってくれた上での意見か不安だ
- 本当に性格テストって合っているのだろうか?
- 自分はどういう仕事に向いている?
このような自己分析に関する悩みをお持ちの方は、是非最後まで読んでビッグファイブを自分の活動に生かしてみてください。
ビッグファイブとは?
まずはビッグファイブについてもう少し詳しく説明していきます。
ビッグファイブとは、アメリカ・オレゴン大学の心理学者R.ゴールドバーグが提唱した個人の性格に関する学説です。
ビッグファイブは文化や民族を問わず人間の性格を5つの特性で説明できるという優れモノです。
では以下の5つの特徴について具体的に見ていきましょう。
- 開放性(Openness)
- 協調性(Agreeableness)
- 誠実性(Conscientiousness)
- 外向性(Extraversion)
- 神経症傾向(Neuroticism)
1. 開放性(Openness)
創造性や知的好奇心、芸術への興味など、新しい経験や美しいものへの興味を表します。
創造性や独立心を図るバロメーターとして、この開放性の度合いが役に立つでしょう。
開放性が高いとチャレンジを好む傾向にあります。
また、趣味に没頭しがちな人や仕事を通して自己実現したいという人も開放性が高いと言われます。
項目 | 説明 |
---|---|
キーワード | 冒険、知的好奇心、創造力、芸術への興味、アイデア、多様な経験、新しいチャレンジ |
高い人 | 新しいアイデアや経験を重視し、既存のルールにとらわれずに物事を進めたいタイプ。創作意欲が高い。 |
低い人 | 分析思考で忍耐を重視し、物事をルール化して進める。新しい変化は好まない慎重派。 |
向く職業 ※高い人 | クリエイター全般、起業家、商品開発、企画、研究者 |
向かない職業 ※高い人 | 事務、経理、工場勤務、品質管理、オペレーター全般 |
2. 協調性(Agreeableness)
他人に優しくしたり、思いやりや共感を持てるかを表します。
気立ての良さの指標とも言われます。
協調性が高い人は、他者とのバランスを図り、協調的に動こうとします。
相手の意見を聞こうとするため信頼を得やすく、チームでの仕事に向いています。
項目 | 説明 |
---|---|
キーワード | 優しさ、親切、共感、思いやり、バランス、従順、献身的、ナイーブ、利他的 |
高い人 | 周りの人と助け合って同調していこうという気質。親切で、争いを好まない。 |
低い人 | 他人との協調に興味が低く、勝負や議論を好む。やさしさや思いやりの優先度が低い。 |
向く職業 ※高い人 | チームでの仕事全般、マネージャー、人事、統括、SE、看護・介護職 |
向かない職業 ※高い人 | 個人でする仕事全般、不動産や保険の営業、クリエイター、研究者 |
3. 誠実性(Conscientiousness)
勤勉性や責任感の強さ、目的を達成するための自己コントロール能力を指します。
誠実性が高い人はすぐに物事を投げ出したりせず、責任感を持って地道にコツコツできる気質を持ってます。
数多くのビッグファイブ研究において、誠実性の高さと仕事の成果の関連が報告されています。
項目 | 説明 |
---|---|
キーワード | 勤勉、良心、身長、規律、自己管理、真面目、慎重、計画性、達成意欲、忠実、継続、粘り強さ、完璧主義、集中力、頑固 |
高い人 | 責任感が強い。物事を諦めず計画的な達成意欲が高い。完璧主義になりがち。 |
低い人 | 飽き性で物事をすぐに止める傾向。柔軟性や自発性が高い。 |
向く職業 ※高い人 | ライター、事務、経理、工場勤務、ルーチン作業全般 |
向かない職業 ※高い人 | 企画、クリエイター |
4. 外向性(Extraversion)
外の世界や他人と積極的に交流しようとする姿勢を表します。
外向性が高いほど社交的で、多くの他者との付き合いを好みます。
おしゃべりでエネルギーが高く、自己主張も強い傾向が出ます。
項目 | 説明 |
---|---|
キーワード | 明るい、社交的、積極的、自己主張、大人数が好き、スリル、オープン、エネルギー、交流 |
高い人 | 社交的で話好き。積極的に外の世界に出る。 |
低い人 | 内向的で一人で過ごすのが好き。考えてから行動するタイプ。 |
向く職業 ※高い人 | 販売員、営業、企画、イベントの主催者 |
向かない職業 ※高い人 | エンジニア、品質管理、分析職全般 |
5. 神経症傾向(Neuroticism)
周りからの刺激による感情や情緒の安定性を表します。
神経症傾向が高い人はストレスに弱く、怒りや興奮、不安を抱えやすい傾向にあります。
情緒安定性が低い人は心理学的に幸福度が低い傾向があることが報告されています。
項目 | 説明 |
---|---|
キーワード | 怒り、敏感、緊張、不安、抑うつ、ストレス、ネガティブ、感動、関心 |
高い人 | 周りの環境からストレスを受けやすく、緊張や不安を感じやすい。 |
低い人 | 情緒が安定しており、悩みが少ないタイプ |
向く職業 ※高い人 | 他者との関わりが少ない仕事、芸術家 |
向かない職業 ※高い人 | カスタマーサポート、コールセンター、販売員、個人営業、カウンセラー |
ビッグファイブ×仕事の研究事例
ここからはビッグファイブと職業の関連について調べた研究をいくつかご紹介します。
特性ごとの向いている職業や、どのような特性が仕事の成果に結びつきやすいかなど、世界中で多岐に渡る研究がおこなわれています。
ビッグファイブと職務遂行の関連
2000年にビッグファイブと職務遂行の関連について調べられた研究の結果、以下のような関連があることが判明しました。
職業 | 評価基準 | 特性 | 関係 |
---|---|---|---|
自動車溶接工 | 具体的職務遂行 | 誠実性 | + |
全体的職務遂行 | 開放性 | - | |
外向性 | - | ||
ミシン操作工 | 生産性 | 誠実性 | + |
外向性 | + | ||
パイロット | 飛行パフォーマンス | 神経症傾向 | - |
保険販売 | 販売努力・販売実績 | 神経症傾向 | + |
警察官 | 警察学校等級・表彰状数 | 外向性 | + |
苦情数 | 協調性 | - | |
全体的職務遂行 | 開放性 | - | |
販売員 | 昇進 | 外向性 | + |
全体的職務遂行 | 協調性 | - | |
外向性 | + |
ビッグファイブの特性によって、職業の向き不向きが考察されています。
この研究ではいくつかのピックアップされた職業のみ取り上げられていますが、他の多くの職業においても何らかの特色が確認されるのではと考えられます。
ビッグファイブと仕事の満足度の関連
2002年にフロリダ大学のJudge氏によって、ビッグファイブと仕事の満足度に関する10万人規模のメタ分析(過去研究のまとめ分析)が行われました。
結果、全般的に大きな関連ではないものの、神経症傾向が高いほど仕事の満足度は低く、外向性と誠実性が高いほど仕事の満足度が高いとの結果が得られています。
エンジニアのパフォーマンスと性格の関係
2019年マレーシアにおいて、212人のエンジニアを対象にビッグファイブと仕事のパフォーマンスの関係性について調査が行われました。
その結果、パフォーマンスには協調性と誠実性が関係していることがわかりました。
この研究でも誠実性が仕事のパフォーマンスに関連しているとの結果であり、誠実性が仕事をする上で必要な資質であることが強調される形となっています。
転職や退職との関連
転職に関わる性格として、神経症傾向が高い人は仕事を辞めようと考える傾向にあります。
また、協調性と誠実性が低い人は実際に辞めてしまうケースが多いことがことが報告されています。
ビッグファイブと仕事のパフォーマンス全般に関する大規模調査
2008年に多くのビッグファイブ×仕事のパフォーマンスに関するメタ分析が行われましたが、仕事の成績と外向性、誠実さが若干関係しているが、ビッグファイブと仕事のパフォーマンスとの関連は薄いとの結果をまとめています。
今まで説明してきた流れと矛盾した結果のように思われますが、この研究は多くの職業にまたがって大規模人数で調査が行われているため、職業別、人種別、年代別、性別といったカテゴリに特化した調査結果と相違が出ているのではと思われます。
私たちの仕事人生に有益な情報という観点で考えると
- 日本人のみ
- 年代別
- 職業別
- 会社の規模
といった切り口の大規模調査が待たれます。
簡易版ビッグファイブテストで診断してみましょう
さて、ここまでビッグファイブと職業について説明してきましたが、
「では一体自分はどういう人間なのだろうか?」
といったことが気になっていると思います。
そこで、簡易版のビッグファイブで簡単に診断できる方法をご紹介します。
本来自分の特性をビッグファイブテストによって知るには、240近くの質問に応える必要があります。
しかし、「もっと短時間で同じ結果を得られるのではないか」という観点で研究が盛んにおこなわれており、現在では数多くの簡易版ビッグファイブが開発されています。
最近ではなんと10の質問に応えるだけである程度正確なビッグファイブがわかってしまうという報告が2007年にカリフォルニア大学の研究チームより提案されています。
今回はそこで提案されているビッグファイブテストを皆さんにご紹介したいと思います。
※当サイトで20問版の簡易版ビッグファイブ診断を試したい方はこちらから受検可能です
これから以下の10の質問に点数をつけてみてください。点数のつけ方は以下の通りです。
- とても当てはまる:5点
- やや当てはまる:4点
- どちらとも言えない:3点
- あまり当てはまらない:2点
- 全く当てはまらない:1点
- 内向的な性格だと思う
- 一般的に誠実な方だと思う
- 怠惰になりがちだ
- 落ち着いていてストレス対処も上手くやれる
- 芸術に関して関心が薄い
- 外向的で社交性があるほうだ
- 他人の欠点を探してしまいがちだ
- 仕事をするなら徹底的にやる
- 緊張しやすいほうだ
- 創造性がある
回答できた方は以下の採点方法で自分の点数を計算してみてください。
- 開放性:問5の点数を反転、問10の得点をそのままで2つの得点を合計
- 協調性:問2の点数、反転した問7の点数の合計
- 誠実性:反転した問3の点数、問8の点数の合計
- 外向性:反転した問1の点数、問6の点数の合計
- 神経症傾向:反転した問4の点数、問9の点数の合計
最も高い点数が出た特性が、あなたの中で最も際立った特徴となります。
なお、全ての特性が満遍なく出た方は、バランス型の人間と言えるでしょう。
精度の高い性格が、このような簡単な質問でわかってしまうなんて驚きですよね。
性格がわかったら、あなたの性格に合う仕事をチェックしてみましょう。
チェックはコチラのリンクからできます(先ほど解説した特性の説明に飛びます)。
まとめ
今回は科学的に正しい性格テスト「ビッグファイブ」について解説しました。
特に皆さんの自己分析の参考になるよう、ビッグファイブと職業の関連性について多めにご紹介しました。
診断でわかったビッグファイブの結果から自分の向き不向きが見えてくるかと思いますので、認識した自分の特性をベースに仕事や職場探しを進めてみましょう。
▼参考文献>
- Personality Assessment in Organization. The SAGE Handbook of Personality Theory and Assessment.
- THE INFLUENCE OF PERSONALITY TRAITS AND QUALITY OF LMX RELATIONSHIP ON THE JOB PERFORMANCE OF ENGINEERS IN MALAYSIA
- Five-Factor Model of Personality and Job Satisfaction: A Meta-Analysis
- Who art thou? Personality predictors of artistic preferences in a large UK sample: The importance of openness
- Measuring personality in one minute or less: A 10-item short version of the Big Five Inventory in English and German
- 大庭さよ・森崇王(2000)「大卒新入社員の適応に対するビッグ・ファイブの役割」『産業・組織心理学研究』第 13 巻
- サービス品質とホスピタリティのメカニズム : 航空会社空港スタッフを例に
- 対人サービス職の人的資源管理―ホスピタリティとパーソナリティの関連から考察するー